アルプスの少女ハイジ

<ハイジを観る視点>
今回ハイジを全巻通して観るにあたって、単にノスタルジックな気分にひたるとかいうことではなくて、自分なりに視点を定めて観てみたいと思っています。
1)登場人物の労働と生活
一連の宮崎作品において、「生きる」ということ「働く」ということは非常に重要なテーマです。「千と千尋の神隠し」ではかなり端的に扱われ、最新作「ハウルの動く城」でも一番大きなテーマだったと思います。「ハウル」は何を言いたいのかよくわかんなかったっていう人、わたしのまわりにもけっこういるんですが、「フリーターたちよ、愛する人のために働け! 間違っても国家権力のいいなりになって戦争に協力するようなことはすんなよ!」という強烈なメッセージだったと、わたくしは考えています。
ハイジに登場する、おじいさん、ペーター、ペーターのお母さん、お婆さん、ゼーデマン家のセバスチャン、チネッテ、こういった人物の労働が実にリアルに描かれ、その人物の人格を象徴しています。そして、ハイジ自身が成長していく過程で「働く」ということがとても大きなファクターになっています。
2)おじいさんという人物
第3話でおじいさんが鷹になぞらえて自分自身のことを語っているセリフを紹介しました。こんなセリフ、ちっちゃい子供にはよくわからないですよね。というか、一生このセリフの意味などわからずに過ごしてしまうような大人もいることでしょう。おじいさんという人物は子供向けアニメという枠を完全に超えている存在です。そこには制作者たちの思いがより強く込められているのではないでしょうか。

  • 第9話 白銀のアルム

冬がやってきました。これまで半袖で裸足だったハイジですが、今回から長袖で靴を履いてます。雪をよけて樅の木の下にやってきた鹿に干草をあげにいくハイジですが、鹿に逃げられてしまい、悲しくなってしまいます。野生と人間との断絶がまず描かれます。しかし、徐々に鹿も慣れてきて樅の木の下にはウサギや小鳥もハイジのあげる餌を食べにくるようになりました。そして、とうとう鹿さんはハイジの手から干草を食べてくれました。
ある日、ペーターが吹雪の中をやってきてくれて、学校のことを話してくれます。でも、ペーターは口べたなのでうまく話せません。ペーターのおばあさんが、ハイジに会いたがっているというのでハイジはとても喜びますが、おじいさんはハイジが村の人とつきあうことに乗り気ではありません。

  • 第10話 おばあさんの家へ

ハイジはおばあさんの家へ行きたくても、吹雪がすごいのでなかなか行けません。おじいさんはうちの中で靴を縫っていました。自分でなんでも直してしまうのです。ようやく天気がよくなって、ハイジはおじいさんのそりに乗ってペーターのおばあさんに会いにきました。ペーターの家は雨戸が外れていたりでガタガタのボロボロです。おばあさんは、うちの中で糸を紡ぐ仕事をしていました。おばあさんは、目が見えないのですが、ハイジにはしばらくそのことが理解できませんでした。ようやくそのことを理解したハイジは大泣きします。
おばあさんは、ペーターに学校で字を覚えて、お祈りの言葉を読んで欲しいのですが、ペーターは勉強がきらいで全然字が読めるようになりません。
ハイジはおばあさんに山での楽しい生活をいっぱい話して聞かせます。翌日ハイジはおじいさんを連れてきて、ペーターの家の修理をしてもらいます。偏屈で頑固者のおじいさんが他人の家の修理をしたのです。おばあさんがおじいさんにお礼を言いたいと申し出ますが、おじいさんは「おまえさんたちがわしのことを心のなかでどう思っているかわかっておる」とにくにくしいです。

  • 第11話 吹雪の日に

吹雪の晴れ間に山に二人のハンターがやってきました。小鹿を追いかけていたハンターに対してハイジは身体をはって小鹿を守ります。お金をあげるから、というハンターの言葉も聞きません。ハンターたちはもうすぐ吹雪になるという、ハイジやおじいさんの忠告を無視してさらに山の上に行ってしまいますが、案の定吹雪になって雪の中に閉じ込められてしまいます。ハイジは最初は嫌っていたハンターたちのことがとても心配になってしまいました。おじいさんは、そんなハイジを不憫におもってヨーゼフを連れて救助に行きます。おじいさんが出かけている間に、ハイジとペーターはいつ彼らが戻ってきてもいいように、雪を溶かしてお湯を沸かしたりして、準備をしています。えらいです。無事助けられたハンターがおじいさんにお礼を言うと「わしはただあの子があんまり心配するんで行ってやっただけだ」といいます。明るい日の光を浴びて、おじいさんが無言で遠くを見つめる顔。おじいさんの内面の変化がじわ〜んと描かれている名シーンでしょう。

  • 第12話 春の音

長かった冬も終わって山に春がやってきました。春の訪れを告げる雪割草の花も咲きました。ヨーゼフはこの花が大好きみたいです。ハイジとペーターはそりで遊びにいきます。途中でみつけた雪割草の花をハイジはおばあさんに届けてあげます。今日も糸車を回しているおばあさんに雪割草の花をあげると、おばあさんは匂いで雪割草だとわかり、とても喜びます。
小屋に帰る途中、ハイジとペーターは雪崩にのまれそうになりますが、間一髪でおじいさんに助けられます。自然のおそろしさを感じるハイジでした。