アルプスの少女ハイジ

クララのお父さんが帰ってくるというのでロッテンマイヤーさんが屋敷の中のチェックをしていたら、ハイジがためこんでおいた白パンが見つかってしまいました。ペーターのおばあさんのために、食事のたびにとっておいて、クロゼットのなかに隠しておいたのです。だからもうすっかりカチカチになってたんですけど。ロッテンマイヤーさんは、カンカンに怒って捨ててしまいます。ロッテンマイヤーさんは、ハイジのことをすぐに「この子はあたまがおかしいんです!」といいます。この人にとっては、自分に理解できないことをする人はあたまがおかしい、ということなのです。自分が信じている価値観、行動基準が絶対であると信じ込んでいる人なのです。ロッテンマイヤーさんを見てると昨今のお受験ママを思い浮かべてしまいます。
ハイジは白パンを捨てられてしまって、ものすごく悲しみます。クララはそんなハイジをなぐさめようと、山羊のお話をしてあげました。

  • 第26話 ゼーゼマンさんのお帰り

クララのおとうさんが帰ってきました。年は40前後でしょうかねえ。もうちょっと若いかもしれません。おとうさんはクララと二人だけで、クララがハイジについてどう思っているかを話すために、ハイジに「冷たい水を汲んできておくれ」と言います。ハイジはまず台所にいって水を汲みますが、自分で一口飲んでみて、あまり冷たくないことに気づきます。そこで、冷たい水を求めて街まで探しに行きました。
ここでフランクフルトの街の中の庶民の生活がじつに見事に描かれています。
まずハイジは共同洗濯場に行くおばさんに冷たい水はないかを聞きます。おばさんが「着いてきな」というので、共同洗濯場に一緒に行きました。共同洗濯場というとゾラの「居酒屋」の冒頭のシーンで有名(?)です。少なくともわたしには「ああ、あそこか!」という場所です。映画でも見てるのでよくわかります。もっとも「居酒屋」はパリ、ハイジはフランクフルトと、違いはありますが、よく似ています。洗濯物を抱えた女性たちがおしあいへしあい、世間話に花を咲かせながら、にぎやかに洗濯をしています。ハイジはおばさんたちの大きなお尻にギュウギュウ挟まれたりしちゃって大変です。洗濯はお湯でやりますから、蒸し暑いし。結局冷たい水は得られずに他の場所を探すことにしました。
随分遠くまで探しにきて、ようやく冷たい水を汲むことができたハイジは、コップをもって慎重にお屋敷まで運びます。
途中、フランクフルト売りのおじさんが、お客さんのおじさんと話している、その間をお水を持ったハイジがツツツツと通ります。フランクフルト売りのおじさんは、アコーデオンみたいな鉄製のフランクフルト保温器(?)を胸にぶらさげています。ドイツにはこんな商売をしてるおじさんがいたのでしょうね。
ハイジが一生懸命に、慎重にお水を運んでいる様子、動きがとってもうまく描かれています。場面設定、画面構成をしている宮崎駿の妙技といえるでしょう。原画、動画を描いたスタッフも、ほんといい仕事をしていらっしゃいます。
そのころお屋敷では、またハイジがいなくなっちゃったっていうんで大騒ぎ。ロッテンマイヤーさんはおとうさんに、ハイジはほんとにしょうがない子でクララのお相手には不適格と主張します。そんなところにハイジが帰ってきて、おとうさんにお水をさしだします。冷たいお水が飲みたいと言ったおとうさんの望みに応えるために、わざわざ遠くまで水を汲みに行ったことを諒解したおとうさんは、ひざまづいて、ハイジと同じ目の高さになり、ハイジの肩に手をやりながら、お水をグイグイと飲み干すと「ああ、こんなにおいしい水は飲んだことがない」と言います。
このシーンでもうボロボロ泣いてしまいました。いまこれを書きながら、また涙があふれてしまっています。
ハイジの真っ正直な心に感動。それを理解し、たたえることのできるおとうさんに感動。
むくわれるかどうかなんて考えなくていい。とにかく真心をもって人に接するようにしよう。
いつか、わかってくれる人があらわれることを信じて。
ハイジはおとうさんとクララと楽しい日々を過ごすことができました。
しかし、おとうさんは仕事でパリに帰らなければならなくなりました。ロッテンマイヤーさんとハイジがうまくいっていないことを心配したおとうさんは、自分の母親、つまりクララのおばあさんにしばらく屋敷にきてもらうことにしました。

  • 第27話 おばあさま

クララのおばあさん、登場です。かなりすごい登場です。馬車がお屋敷前に到着。おばあさまが降りてきます。おじぎをしてるロッテンマイヤーさんが頭をあげると、そこにいたのはクマ!!動物ぎらいのロッテンマイヤーさんがぶったおれます。それはクマの着ぐるみをかぶったおばあさんでした。ロッテンマイヤーさんが到着前からビクビクしてるんで、どんな怖いばあさんかと思ったら超おちゃめなおばあちゃんでした! クマの着ぐるみでクララやハイジをおどかそうとしますが、子供たちはケラケラ笑って全然こわがりません。ハイジは最初にちょっとだけ警戒の表情をみせて、無言でグルグルとおばあさんのクマに追いかけられてみせます。が、すぐにアハハハと笑いだすのですが、このへんの心理描写がまた見事だなあと思うのです。
また、おばあさんの到着にともなって、召使のセバスチャンやチネッテは、おばあさんごのみの調度品を用意したりといったことを自主的にやろうとします。おばあさんのために積極的に働いてるんですが、ロッテンマイヤーさんは「勝手なことはしなくていいです!」と不機嫌です。
おばあさんは、食事のまえに水を入れたコップをスプーンでたたいて曲を演奏したりと、楽しいこと大好きです。ハイジはすっかりおばあさんが大好きになってしまいました。
夜寝る前にはおばあさんはハイジの部屋にこっそりやってきて、お話の本を読み聞かせてあげるのでした。

  • 第28話 森へ行こう

ハイジはクララと一緒に家庭教師に勉強を習っているのですが、アルファベットもなかなかおぼえられませんでした。この家庭教師ってのが、まあ、つまらない腐れインテリなんすけど。不可知論者で何事も断定を避けて、そのくせベラベラとつまらぬことを長々と話すんだな。ハイジの教育もアルファベットをAから順に暗誦させて、なかなか覚えませんね、みたいなことしかしてない。
ところが、いきないハイジがドイツ語の本をカタコトながら読んでるじゃないすか。というのは、おばあさんが毎晩楽しいお話を読んでくれて、それをおぼえちゃったハイジが、今度は絵をみながら分からない単語は想像しつつ読んだりして、それで字が読めるようになっちゃったんです。ここでも泣いちゃいました。そうだよねえ。まず子供の興味関心を刺激するところから教育って始まるのですよね。クララもロッテンマイヤーさんも、びっくり。おばあさんは大喜びです!
クララは毎日午後、お昼ねすることになってまして、そのあいだハイジはやることないです。ロッテンマイヤーさんは、部屋で勉強してなさいって言うんですが、おばあさんはハイジとじゃんけんして勝ったほうが階段を登るっていう遊びをはじめちゃいました。あと、秘密の部屋に案内していろいろ面白い骨董品みたいのとか、仕掛けでうごくおもちゃみたいのを見せてあげます。ところが、ハイジはその部屋の壁にかけてある「羊飼いと老いた聖者」の絵を見て、山での生活を思い出して泣き出してしまうのでした。おばあさんは、そんなハイジがかわいそうになり、クララもいっしょに森に行くことにしました。もちろんロッテンマイヤーさんは大反対です。おばあさんはロッテンマイヤーさんに「いつでも自分だけが正しいと思ってはいけないわ」と言いますが、ロッテンマイヤーさんは、「身体の弱いクララお嬢さんがどうなっても奥様に責任をとっていただきます!」みたいなこと言います。