アルプスの少女ハイジ

  • 第29話 ふたつのこころ

ハイジとクララはおばあさんに連れられて森にやってきました。元気に遊びまわるハイジをみて車椅子のクララは悲しくなってしまいます。クララは「もう帰りたい!」っていいますが、おばあさんに慰められて、機嫌をなおしてハイジと一緒に遊びます。
DVDであらためて見るまで、わたしのあいまいな記憶の中ではクララはちょっといじわるでツンとした子というイメージがあったのですが、ぜんぜんいい子ですよ、クララは。もちろん、箱入りのお嬢様らしいわがままさや、ハンディキャップを抱えているがゆえのコンプレックスなどなど、あるわけですが、根は素直でとてもよい子です。どうやら、「キャンディ・キャンディ」のイライザと混同していたようです。ごめんね、クララ。
ところで、森でいっぱい遊んで屋敷に帰ったクララは高熱を出して寝込んでしまいます。ロッテンマイヤーさんは、それ見たことかと鬼の首をとったようにおばあさんを責め、それもこれもみんなハイジがきてからと、全てハイジが悪いかのようにキーキー怒鳴りたてるのでした。それを聞いたハイジは悲しくなってしまうのでした。

  • 第30話 お陽さまをつかまえたい

寝込んでいるクララの部屋でおばあさんとハイジは赤頭巾ちゃんの人形劇をやってあげます。ハイジは台本読むのまだうまくないですが、一生懸命です。おおかみの人形をアレンジしようと、自らお裁縫をして尻尾とかをくっつけます。山にいたときにおじいさんにお裁縫を習ったのです。おじいさんはなんでも自分でできちゃうんです。エライですねえ。そして、ハイジにしっかり教えていたんです。
クララが早くよくなってほしいと願うハイジはお医者さんのところに聞きにいきます。ハイジはクララがにが〜いお薬を飲むのがつらそうだったので、もっと甘いお薬にして、とお医者さんに頼んだりします。お医者さんはいいます。「薬をいっぱい飲んだからってよくなるわけではない。薬はからだがよくなろうとするのを手助けするだけ。お陽さまのひかりを浴びるのがいいんだよ」それを聞いたハイジはお屋敷専属の御者のヨハンにお願いして森に連れていってもらいます。ヨハンは最初はこばんだのですが、ハイジがお願いするので結局折れてくれました。ヨハンもいい人です。森には、こないだ一緒に遊んだ近所の子供たちがいて、きれいな花が咲いているところを教えてくれました。そこは洗濯場の近くでした。洗濯場ではお母さん連中が洗濯をしていました。洗濯ものを洗濯棒でバシバシたたく洗濯です。おそらく洗剤は使ってないです。洗剤なんていつから使うようになったんでしょうねえ。ハイジは使い古しの洗濯かごをもらって、その中にきれいな花や、近所の子がつかまえてきてくれた蝶々をいれて、板でふたをしてお屋敷に帰ります。屋敷に帰ると、例によってロッテンマイヤーさんがカンカンになってて、「またヘンなものを持ち込んで〜!! とっとと捨ててきなさい!」と言いますが、おばあさんがとりなして、クララの部屋に運びます。ふたをしていた板をそっととりはずすと蝶々が羽をとじてお花にとまっておとなしくしてました。そして、いっせいに飛び立ちました! うわ〜! クララ大喜びです。ハイジはすぐに窓を開けてあげて、蝶々たちはそとに飛んでいきました。

  • 第31話 さようならおばあさま

今日もハイジはおばあさんと「階段じゃんけん登り」をして遊んでいます。ハイジはたくさん階段を登れるので、パーで勝とうとしてパーばかり出します。おばあさんはしばらくグーで負けておいて、頃合を見計らって連続チョキでハイジに逆転します。なんで逆転されたんだろうって悩むハイジに「頭を使わなくっちゃ」というおばあさん。そうだよね、こういう遊びのなかで、いろんな駆け引きを始めとして自分の頭で考えるってことを学んでいくものですよね。おひるねさぼって出てきちゃったクララは「あたしもやりたーい」っていうけど、車椅子でムリだよね、と自ら落ち込んでいたら、「わたしがかわりに登りましょう」とセバスチャンが名乗り出て、わーいってとこにロッテンマイヤーさんが現れて「なにやってんざますか?」と水をさすわけです。
おばあさんとロッテンマイヤーさんがなにやら深刻な話をしてるのを聞いて、おばあさんがそろそろ帰ってしまうことを察して、ハイジとクララは悲しくなるのでした。
そんな二人の気を紛らわそうとしておばあさんは街の広場に二人を連れて行くとちょうど結婚式をやっていてきれいなお嫁さんに「すてき〜」とはしゃぐ二人です。
おばあさんの企画演出でクララのお嫁さんごっこが盛大に開かれますが、その大盛り上がりのさなかにおばあさんはこっそりと出ていってしまうのでした。涙。
ハイジは、ハっと気づいておばあさんの乗った馬車を追いかけるのでしたが無情にもどんどん遠ざかってゆく馬車でした。涙涙。
ハイジがお屋敷にもどると、お嫁さんごっこはすでに終わっていて、チネッテが片付けをしていました。チネッテは「これからはもとのお屋敷に戻るんだから迷惑なことしないでちょうだいっ」とハイジに言います。チネッテもいい子なんだけどね。仕事は仕事っていう割り切りが強くて、面倒なことは御免よっていうタイプですか。当時の女性賃労働者の心理と労働形態、とかについて考察したいなと思いましたが、ちょっと知識不足なのでやめておきます。でもね、ハイジの制作者たちはチネッテの人物設定するにあたって、社会背景をかなり調べていると思うのです。そういった「作り込み」っていうのがハイジには随所に見られるのですよ。すごいと思いませんか?

  • 第32話 あらしの夜

おばあさんがいなくなってからというものハイジもクララも悲しいです。ロッテンマイヤーさんはおばあさんがいなくなったもんだから、「秩序」の回復に超元気やる気まんまんです。ハイジへの「しつけ」も厳しさをましてきました。山のことを考えるな!という思想統制となってそれは現れるのでした。というか、それは感情、感性の圧殺である。ギヂギヂと押しつぶされていくハイジの感情。わたしもみていて胸が苦しくなるのでした。おばあさんが教えてくれた秘密の部屋にしのびこんだハイジは「老いた聖人と羊飼い」の絵をみて、山のことを思い出し、山羊の真似をして両手両足をついてピョンピョンはねまわったりするのですが、その姿のなんとかわいそうなこと!! たったひとりで、誰もいない部屋で、メェ〜メェ〜というハイジをみてなんだか涙がとまりませんでした。そこにロッテンマイヤーさん登場です。秘密の部屋への出入りも禁止され、ハイジはもはや完全に自由を奪われ、自らの感情を自ら押し殺していくことになるのでした。
ロッテンマイヤーさんの殺し文句は「クララお嬢様が病気になってしまいます!」クララのことも大好きなハイジは、クララのことを考えると自分が我慢しなければと考えてしまうのです。
ロッテンマイヤーさんについて考察するのはかなりこれ、しんどいことです。「ハイジ」というお話のなかのひつとの役割として考えてしまえば、自由にのびのびと自然のなかで生きることの尊さを強調するための「憎まれ役」「体制側秩序派」みたいなところなのですが。当時の社会状況、教育、宗教などなど調べてみたいところです。また、初回放映時であれば、いわゆる「教育ママ」といわれた母親の象徴みたいな感じがしますが、現代の「お受験ママ」っていうのはまたちょっと違ってますよね。このへんも興味深いところです。しかし、「教育ママ」に育てられた子供も「お受験ママ」に育てられた子供も、どちらもあまり幸せにはなれていないような気がする。子供たちが苦しんでいることに変わりはなく、だからこそ宮崎駿はアニメを作りつづけているのではないだろうか。