フランス社会

パックス―新しいパートナーシップの形」読了。
フランス語原書のタイトルは「le Pacs ―Le Pacte civil de solidarité」
パックスとはフランスにおける新しいパートナーシップで連帯民事契約と訳される。
結婚と同棲の中間と考えられる。
注目すべきはパートナーの性別を問わないことで
同性カップルの権利が法的に定められたことになる。
本書では
・パックスとはそもそも何であるのか。
・誰がパックス契約を結べるのか。
・公証人のところへ行かなくてはならないのか。
・結婚や同棲に比べてパックスの利点は何か。
・パックスを結んだ人のパートナーに対する義務とは何か。
・パックスは解消できるか。どのように解消できるのか。
という疑問に答えるものである。
法的手続きについて詳細にガイドされていて非常に参考になるが
直接自分がパックスを結ぶという立場にあるわけではないので
あんまり頭には入らない。
法律用語とか苦手なので。
興味深く読んだのは訳者解説Commentaireである。
パックス法成立までにフランスでどのような議論があったのか書かれていておもしろい。
最近、イギリスで同性婚が合法化され
エルトン・ジョンなどが著名なアーチストが同性パートナーと結婚式をあげたりで話題になり
日本でも認知が高まってきているように思います。
しかし、フランスでも随分議論になったようで、なかなか難しい問題ではあります。

異性カップルとその子からなる核家族という単位に再生産を担わせ、それに合わせて社会保障やら税制やら教育制度を構築してきたのであるから、これが揺らげば、社会と国家の家族に対する態度も変更を余儀なくされるはずである。このような社会的選択を迫られたとき、どう対処することができるのか、少なくともどのような出発点が選択しうるのかをフランスの経験は国を越えて示してくれている。「自然」だと思われていることに無条件に依拠して議論を自覚的決定の対象からはずすのか、民主的な手続に則り突き詰めて検証するか、この選択こそがまず大きな分かれ目であることをフランスの知的状況は教えてくれているようだ。