昼過ぎにケータイに着信あり。
母からである。
仕事中なのでとらなかったが留守電にメッセージが残された。
こんな時間に電話してくるのは何かあったのかなと思って
ちょっと席を外して留守電を聞くと
入院している父の容態が急変したとのこと。
実家に電話して母と話す。
すぐにどうこうということはないだろうが覚悟はしておくようにと言われた。
29日から休みなので、休みに入ったらすぐ帰るが何かあったら連絡してと言っておいた。
いつか来る日がとうとうやってきた。
現実的な問題としていろいろと準備しなければならないし
片付けてしまわなければならない仕事はあれとこれとか考える。
計画していた紀伊半島一周旅行はもちろん中止。
ただ「チボー家の人々」の原書は持って帰る。
死期の近づいたチボー氏と息子たち、ジャックとアントワーヌが過ごす数日間は
この大河小説のなかのひとつの山場である。
父親も若き日に読んだ「チボー家の人々
子供のころ、実家の本棚にあった、その黄色い本の背表紙がとても気になっていた。
それから十数年後にようやく一年間かけて全巻を読み通した。
わたしがフランス語を勉強するようになったのも、
もとはと言えばチボー家を読んだからである。
父の枕もとでチボー家を読もうと思う。