三島由紀夫の「芸術断想」電車の中で読了。

「私の洋画遍歴」というエッセーがすごくおもしろかった。
三島は随分映画を見ている。

 フランスへ行くと、一ヶ月パリに滞在することになり、その間主に附合ったのは、木下恵介氏や黛敏郎氏であったが、この一ヶ月は映画をやたらむしょうに見た。

このとき三島はパスポート入りのかばんを盗まれて再発行までの1ヶ月をパリ滞在を余儀なくされたのだが、「やたらむしょうに」という表現が、三島らしくなく、逆に三島の素の感情を表していて、彼が本当に映画が好きなんだなあというのが、よく分かった。

これだけ見ていれば、きっと映画は脳神経をも犯しているにちがいなく、小説を書いていて、映画の影響がどのくらいあるものか、それを考えると、映画のなかった時代の作家より、想像力が麻痺して、減退してしまっているのではないかという気がするのである。

いやいや、三島は映画を多く見ることで、優れた作品を残している。
最近のテレビ漬けのわけ分かんない作家もどきはどうしようもないけど。