白水社文庫クセジュフランス植民地帝国の歴史 (文庫クセジュ)」読了。
訳者あとがきより

 さて、日本人としてヨーロッパの植民地主義の研究をする意味について、最後にふれておきたい。まずヨーロッパの植民地支配の歴史に言及することで、国際的に批判されている日本の植民地支配を相対化しようとする立場がある。植民地支配は日本のみがしたのではないとする、いわば開き直りである。しかし、植民地支配をしたのは日本だけではないことで、日本の行為の免罪符になるわけではない。また、植民地支配の残虐さの度合を比較してその善悪を裁くのがおよそ無意味であるのは、いうまでもない。考慮すべきは、明治開国以降の日本がヨーロッパの「文明」を絶対のものとして、それを目標に邁進してきた歴史があることである。日本における西洋の受容には紆余曲折があったとはいえ、ヨーロッパを上位に位置づけ、みずからそれに「同化」しようとしてきた日本の姿も否定できない。こうした姿勢は、「名誉白人」などという呼称をありがたがる心性につながるものであり、さらにいえば日本以外のアジア諸国に対する蔑視と背中合わせのものである。
 日本でも、ヨーロッパ中心主義への批判が唱えられて久しいが、西洋植民地主義の諸側面を再考することは、ヨーロッパの歴史を相対化する試みの一つとなるはずである。さらにはそうした視点を通して、日本の帝国主義、そして帝国意識についても逆照射する形で再考する契機になるであろう。他者の研究は、おのれを知ることでもある。ヨーロッパ諸国の植民地主義の研究は、ヨーロッパの歴史の見直しにのみとどまるものではないことを、銘記しておきたい。

そうです。
フランスの植民地主義のことを知るのは
「フランスもワルやのう」というためではなく
日本は侵略の歴史にどう向き合うかということを考えるため。