@ユーロスペース

フランドル FLANDRE」を観てきました。

フランス北部、フランドルの美しい田園風景と砂漠の戦場。
フランドルにいる少女バルブの心に
遠く離れた戦場に行った彼女を愛する男、デメステルの心が共鳴する。
彼が戦場の極限状況下で行う残虐な行為が
バルブの心を痛めつける。


戦場は、どこというのでもない。
どこでもないけれども、どこでもありうるような場所。
テロ対国家の闘いのなかで
道理なき闘いに動員された兵士たちが恐怖の中で戦う。
仲間が殺され
少年兵を殺し
少女をレイプし
その復讐を受けた仲間はペニスを切断された上で殺され
逃走中に仲間を見捨て
民間人を襲撃し……
戦場という極限状況で人間性を失っていく様が
あくまで淡々と描かれる。
フルメタル・ジャケット [DVD]」を思い出す。
これは、フランスの近未来的ストーリーだが
日本の近未来でもある。
日本の若者が対テロ戦争の前線に動員されることは
全くありえない話だろうか。


この作品では、セックスシーンが何度も描かれる。
どれも、極めて一方的なものだ。
男が挿入し射精して果てるだけの。
これこそ、現代において支配的な権力者の姿を象徴しているのではないか。
最大限の利益を効率よく上げるために飛び交うマネー。
自然環境を破壊しつくす大規模農業、大規模工業。
過労死か餓死かの二者択一を迫るような雇用情勢。
爆弾の雨を降らして大地をズタズタにする戦争。


戦場から戻ったデメステルは、バルブに愛を告白し結ばれる。
フランドルの豊かな自然が二人を包む。
人間の再生を真摯に願う映画である。