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三島由紀夫の「盗賊 (新潮文庫)」お風呂で読了。
三島の初の長編小説。
その豊饒なる言葉に酔う。
愛している生徒に罰を課した先生のような目附
空気は皆が耳をさばだてているせいで薄い硝子のように壊れやすいものになっていた。
彼らはある無慈悲な画家の手で――その画家の名は「時」というのだが――一枚の絵のなかに塗り込められてしまったかのようだ。
自殺とは錬金術のように、生という鉛から死という黄金を作り出そうとねがう徒のぞみなのであろうか。
生ばかりを材料にして死を造ろうとは、麻布や穀物やチーズをまぜて三週間醗酵させれば鼠が出来ると考えた中世の学者にも、おさおさ劣らぬ頭のよさだ。
いわば人は死を自らの手で選ぶことの他に、自己自身を選ぶ方法を持たないのである。
自殺しようとする人間は往々死を不真面目に考えているようにみられる。否、彼は死を自分の理解しうる幅で割り切ってしまうことに熟練するのだ。
この本から、赤鉛筆で比喩表現にサイドラインを引きながら読んだのですが、
真っ赤になってしまった。