三島由紀夫の「文学的人生論 (知恵の森文庫)」電車の中で読了。
文学的人生論 (知恵の森文庫)
タイトルどおりの評論など編まれた文庫。
「芝居と私」より

シモンズは、ゾラという小説家は、テーブルを書けば、必ずそのテーブルには足が四本あったと書き、その部屋には四つの壁があった、と書く、とからかっているが、こういう描写万能はひとり自然主義の滑稽な欠点というにとどまらず、大袈裟に云えば十九世紀に発達した小説というジャンルの芸術的宿命を象徴している。

三島はフランス文学に関しての論ずることは多いが、ゾラについて言及しているのは、私が知る限りではこの一節だけである。しかも、それはシモンズからの引用であり、三島が直接ゾラを読んでいるかは分からない。この書き方からすると、おそらく読んでいないのではないかと思われる。
もう死んでしまった三島に言ってもしようがないが、ゾラを読みたまえ!
そうすれば、いわゆる文学史で定義される自然主義という言葉でもってゾラが定義できないものであることぐらいは分かってもらえるのではないだろうか。