三島由紀夫私の遍歴時代」通勤電車で読了。

電車の中で三島の文庫を読むときは3色ボールペンで読んでいます。
赤で自分が書けそうもない漢字に丸。
緑でおもしろいなと思ったところに傍線。
青で三島が読んだ作家とその作品に傍線。
例えば太宰治を評したあたり。

 私は以前に、古本屋で、「虚構の彷徨」を求め、その三部作や「ダス・ゲマイネ」などを読んでいたが、太宰氏のものを読みはじめるには、私にとって最悪の選択であったかもしれない。それらの自己戯画化は、生来私のもっともきらいなものであったし、作品の裏にちらつく文壇意識や、笈(きゅう)を負って上京した少年の田舎くさい野心のごときものは、私にとって最もやりきれないものであった。

三島の太宰嫌いは有名だが、「私の遍歴時代」の中で、実際に太宰を訪ねその面前で「僕は太宰さんの文学はきらいなんです」というエピソードが書かれている。
その三島が、晩年、彼の自宅を訪ねて面会も求めた少年に
「一番ききたいことはね、……先生はいつ死ぬんですか」
と聞かれてしどろもどろな返答をしたということが「独楽」という短編に記されている。