三島由紀夫絹と明察 (新潮文庫)」お風呂で読了。
絹と明察 (新潮文庫)

近江絹糸の労働争議に題材をとり、日本的近代と西欧的知性の闘いを描いた長編小説。

うーん、組合結成公然化の場面の描写がリアルだ。
経験者でなければ分からないような当事者の心情が描かれている。
組合結成の中心人物だった青年が、争議の中で思う。

秘密の囁きは公然たる叫びになり、こそこそした合言葉は朗らかな会話になった。それでも大槻たちには、今自分達が大声で喋っている言葉が、何となく、使ってはならない言葉を使っているという感が拭えなかった。それは本来公明正大な思想の筈であり、自分の透明な正義感から出たものであるが、あんまり人々の口から簡単に、自明の事柄のように言われだすと、今度は自分の独創性をおびやかされるような気がしたのである。